1.概要
自分勝手な犯罪を犯し、反省もなく、将来更生の見込みがないにもかかわらず、死刑判決を免れ、収監された犯罪者の家族(離婚した母親)が殺害されます。犯人の手で書かれた「ネメシス」の血文字が現場に残されます。

出版社の作品紹介は以下の通りです。
ドンデン返しの帝王が「死刑制度」を問う 無期懲役の判決を受けた殺人犯の家族が殺された。遺族による復讐か、現在の 司法に対するテロか……渡瀬刑事が追う。社会派ミステリ。
ネメシスについても調べてみました。
ネメシス(古希: Ν?μεσι?, Nemesis )は、ギリシア神話に登場する女神 である。人間が神に働く無礼(ヒュブリス)に対する、神の憤りと罰の擬人化で ある。ネメシスの語は元来は「義憤」の意であるが、よく「復讐」と間違えら れる(訳しにくい語である)。擬人化による成立のため、成立は比較的遅く、 その神話は少ない(Wikipedia)
2.内容ちょっぴり
この事件を担当するのは、「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」に登場する岬検事と厳つい顔の渡瀬刑事です。
警察は、現場に残された血文字に関しては発表を控えます。そして、司法に関するテロの可能性を考え、判決を下した裁判官と、当時の弁護士に対して警護を開始します。
しかし、当時の判決結果に疑問を抱くものは多く、捜査は難航します。
被害者の遺族にも会いますが、遺族の素朴な質問(何故、死刑ではないのか?)に対し、検察及び警察には、明確に答えるすべはありません。
そうこうするうちに第二の事件が発生します。
やはり、やるせない犯罪の加害者の家族が被害に逢います。場所は最初の事件とは関連がありませんが、同様の血文字が残されており、岬検事と渡瀬刑事はその背景を追いかけます。
しかし、通り魔的な犯行で、目撃者もなく、捜査はなかなか進みません。
これらの犯罪の加害者に対して聞き込みを行いますが、彼らは人間として出来損ないであり、死刑にならない理由を探すのが難しい程の人間です。こういう人間を見て、世のマスコミは騒ぎ、死刑廃止論の論客は叩かれて行きます。
そして、意外な犯人が捕まるのですが、話はそこで終わりません。さすが、ドンデン返しの帝王と呼ばれるだけあって、それに値する結末を持ってきます。
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そして、温情裁判官と言われる裁判官のぞっとするような考え方や、国際社会の死刑制度の動きと、日本の司法の動きの鈍さなどが語られています。日本人の八割が死刑賛成の現状も述べられています。
ノンストップの展開で面白い小説だと思います。
是非、ご一読を。