実際にこんなことが起きたら将棋界は?盤上の向日葵 柚月裕子/著

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1.概要

面白く読み終えることが出来ました。圭介と唐沢先生の心温まる交歓から、クズ男二名が圭介を引っ掻き回す様子、そして、その経緯を追う刑事の執拗な追求など、たくさんのエピソードが満載です。エーッというラストにも感動しました。

しかし、主人公である上条桂介の一生を思うと、「ご苦労様でした」としか言いようがありません。たぐまれな頭脳を持っているにもかかわらず、どうしようもないしがらみを抱えて、人生を生きていく男の物語ですね。

実際に、こんな事件があったら、大変なことになるでしょう。特に、現在、藤井聡太七段や豊島二冠、渡辺二冠他有望な若手棋士で盛り上がっている将棋界が一変してしまうことでしょう。

聞けば、作者の柚月裕子は将棋は知らないとのことですが、さすが作家は凄いですね。

対局での臨場感や棋士の息遣いなど、よくこれだけ描き切るものだと感心してしまいます。60爺は、将棋の腕前は4級程度ですが、この小説は、将棋を知っていると何倍も楽しめるものだと思いました。

2.ちょっぴり詳細

内容紹介です。

埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが捜査を開始した。それから四か月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦の会場だ。世紀の対局の先に待っていた、壮絶な結末とは―!?

上条圭介は、母が死んで自暴自棄になった父親に虐待を受けている少年です。現在と違い、昔の親権はものすごく強く、簡単に他の家庭へ踏み込んでいけない状況が語られます。

その中で、将棋の師となる唐沢との交流が生まれたのは圭介にとって、一幅の清涼剤だったでしょう。しかし、それも、クズな父親のために、無になってしまいます。

長じて、東大に入る圭介は父親を捨てて上京しますが、別なクズ男である東明と出会ってしまいます。

この物語に出てくる東明は、実在した真剣師小池重明がモデルになっていますね。どちらも、将棋はめちゃくちゃ強いんですが、それ以外は、社会人としての規範などゼロの男たちです。

小池重明は、余りに強いので、プロになれるところまで話は進んだのですが、やはり、素行の悪さが響いてプロを断念し、堕ちていってしまいます。

そして、圭介は、東明に振り回され、唐沢からもらった高価な駒をだまし取られてしまいます。そして、この駒を買い戻すほど成功する訳ですが、この出来事が物語の肝になっていきます。

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3.もう一つの物語

さて、この小説は、二つの時代が交互に描かれていて、二つの物語がだんだんと接近して、詳細が徐々にわかってくるところが面白いです。この手法は、思い出せないのですが、別のどこかでも読んだような記憶があります。

この二つの物語なんですが、2.では将棋に関する部分しか書きませんでしたが、もう一方は警察モノです。

殺人事件発生から、そこに埋められていたXXを手がかりとして、石破、若手のXXが、その出所を探っていくところが描かれるのです。

XXが石破の勝手さに振り回されるのは、東明と圭介の関係を髣髴させます。

そして、最後に、この物語が交差するとき、エピローグが訪れます。最後は、皆さんで堪能してください。

是非、ご一読を。

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