戦時下の上海で伸し上がる容姿端麗な女子と関わる男達の物語 月下上海/山口恵以子  著

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1.概要

婚活食堂著者の山口恵以子に、松本清張賞受賞作があるとのことなので読んでみました。この賞は、第20回のものですね。内容紹介を読むと、「食堂のおばちゃん」ではない太平洋戦争時のある女性の物語でした。

スキャンダルを逆手にとり人気画家にのしあがった財閥令嬢・八島多江子。謀略渦巻く戦時下の上海で、多江子が愛する運命の男たち…。戦時下の上海で奏でられる、或る女の悲恋歌。

戦時中の上海(国は現在の中華人民共和国です、念のため)を舞台にしたお話です。

太平洋戦争(本来は大東亜戦争ですね)については、いろいろと言われ、また、当時の日本の状況もあるとは思いますが、政治的に、どこかで引き返すことが出来なかったのでしょうか。

主人公は、内容紹介にあります通り、海運業で財を成した財閥令嬢・八島多江子です。この多江子は、容姿端麗で、話術に長け、オトコを魅了する女性に設定されています。しかも、絵がうまく、上海で画家として成功する様が描かれます。

2.人間はわからない

多江子が再出発をお願いした際に、文藝春秋社を創業した、あの菊池寛が小説に登場し、発破をかけています。「目指せ洋画壇の貴婦人を―知的で優雅に、颯爽としてスマートを演じろ」。

なぜ、多江子が再出発することになったのか、画家になろうとしたのかも、おいおい語られていくのですが、いやー、この物語を最後まで読むと、人間っていうのは、相手のことをわかったようでわかっていないことが良くわかります。

夫婦であっても、やはり他人同士、一方的にわかったつもりになってはいけないんですね。

後々真実がわかっても、後悔が残るばかりになってしまいますので、しっかりと話し合って、お互いを尊重し、なおかつ理解することが重要であると感じました。

ご存知の通り、日本は最終的に戦争で負けてしまい、多江子の身の周りも激変します。

しかし、全くめげずに、その運命を受け入れて、生きていく姿も描かれます。令嬢だった人間が、スキャンダルがあったにせよ、これだけ変われるのは驚きですね。というより、人間の凄さなのでしょうか。

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3.多江子を取り巻く男たち

多江子の周りには、いろいろな男性が現れます。夫の瑠偉から始まり、父親の部下で多江子にほのかな思いを寄せる外山、戦死してしまう弟の信吾、上海に渡ったのち知り合う憲兵隊の槙、槙から内情を探るよう依頼(強要?)された夏、信吾によく似た士海との出会いもあります。

彼らとは濃淡の違いこそあれ、それぞれの交流があるのですが、多江子にとって、何が幸せだったのでしょうか?最後の恋となった夏との運命には無常さが募ります。

そして、槙との数奇な交流と別れ、立派に成長して帰ってきた士海と、それぞれの人々について、きちんと結果を付けています。

この後、帰国するであろう多江子の先には何が待つのでしょうか?そちらも、見てみたかったです。

スーッと中に入り、サクサクと読み進めらる小説です。

是非、ご一読を。

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