戦国時代に武張ったことが苦手な人間の悲喜こもごも!有楽斎の戦 天野純希/著

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1.概説

主人公は、織田有楽斎です。この人、信長の弟だったのにもかかわらず、秀吉のお伽衆をやったり、大阪城にいたのに、大坂の陣においてうまく逃げだし、最終的には家康の庇護で一生を全うした人物ですよね。

調べてみると、織田信秀の十一男で、有楽・如庵(うらく・じょあん)と号したそうです。

信長とは、13歳離れた弟で、この小説の中では武張ったことが苦手な人間として記載されており、戦国時代、しかも信長の兄弟という立場では、生きるのが非常につらかったであろうことが容易に察せられます。

本能寺の変では、信長の嫡男信忠に自害を進言した挙句、自身は、安土を経て岐阜に逃れたことより、「人間ではない」と皮肉られることになりました。それでも、本人は生きたかったとあります。

戦国時代の物語を読むと、登場する人物は、皆勇敢で、部のない人間は人間にあらずのような感覚でしたから、現代の人間から見ても、この時代に生きた人々は大変だったろうと思います。

まア、死生観が現代とは全く異なるものではありますけど。

薀蓄をもう一つだけ。60爺は、有楽町が家康に賜った土地から名づけられたと、ずーっと思っていました。しかし、文字の類似からきた俗説だそうです。初めて知りました。

2.本書について

この小説は、本能寺の変、関ヶ原、大坂落城のそれぞれを、脇役二名の観点からみています。ですから、全部で6篇の物語があります。

本能寺の変、関ヶ原、大坂落城に関わる有楽斎の物語と、これらの事件に重要な役割を果たした人物(島井宗室、小早川秀秋、松平忠直)のお話が、それぞれ1篇ずつ語られます。そのため、主人公は全部で4名いるわけですね。

内容紹介は次の通りです。

有楽斎、この戦国一愛すべき男。怯えて、喚いて、逃げる―覇王信長の弟・織田有楽斎は、「本能寺の変」「関ヶ原の戦い」「大坂の陣」でどう戦ったのか。戦国三大合戦を有楽斎ともう一人の視点で描く、前代未聞の連作短編集。

有楽斎の戦

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3.それぞれの物語

60爺は、6篇の物語のうち、小早川秀秋、松平忠直の2編に興味を惹かれました。この二名の大名は、現在、伝えられている歴史の中では、暗愚の象徴ともされています。

小早川秀秋は、関ケ原での裏切りを気に病んだ「狂い死」、松平忠直は、領内での常軌を逸した行動を咎められ、強制的に隠居させられたとなっています。

しかし、この中での物語を読むと、視点が全く異なっており、どちらも優秀な主君に描かれています。しかし、両者とも、最終的に幕府側の筋書き通りに歴史から抹殺された悲劇の武将であったという考え方ですね。

有楽斎については、共感を得るところが多々ありましたし、静かに生きたいのに、立場上いやおうなく前面に押し出されるところがつらかっただろうと思います。

それでも、有楽斎は、利休十哲に数えられるなど、波乱万丈の人生を十分に生き切った幸せな人だったのではないでしょうか。

是非、ご一読を。

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