1.ハードボイルドだが世界感は静か
とても面白い探偵小説です。昨年10月に読んだ「それまでの明日」にも書きましたが、「それまでの明日」の14年前に書かれた新・沢崎シリーズの第1弾なんです。
第2弾が、とても面白かったので、時間があったらぜひ読んでみたいと思っていました。
作品紹介です。
新宿署地下駐車場に轟いた二発の銃声。私立探偵・沢崎は大晦日に狙撃事件に巻き込まれた。その後、事件は思いがけぬ方向へ発展し、沢崎の新たな活躍が始まる。ファン待望の新・沢崎シリーズ第1弾遂に刊行。

さて、読んでみると、この小説も、「それまでの明日」に勝るとも劣らないハードボイルドな展開が続きます。しかし、世界感が不思議に静かな感じを受けました。
沢崎は、何事にも欲がないように見えるからですかね。2.で書いていますが、物事に対して物凄く淡白な感じです。
普通、ハードボイルドな小説の主人公って、何かに対して貪欲なものを持っていると思いますが、沢崎はそういうものは一切ないように見えます。そんな所が、静かな感触を60爺に与えているのかもしれません。
2.沢崎かっちょっいい!
この小説の中の沢崎は、すごくかっこいいです。
金に関しても、無関心と言っていい位の対応を見せます。周りの金持ちが、沢崎に金をもらってほしくてたまらなくなるようなナイスガイに描かれています。
公安に成りすましたり、謎の中国人(60爺の年齢では片目かっと思ってしまします)に化けて沢崎に接触する敵役も、「金を受け取ってもらいたいおもってしまう」と感想を述べてしまうくらいです。
しかも、事件解決後、支払われた料金についても、「決まった額があって、そんなにもらうと、後が続かなくなる」なんて言っちゃって、礼金さえも受け取らないんですよ(支払う側は、ウン億円ももっているのに・・)!
沢崎と敵対している刑事は海外(パリ)出張中にもかかわらず、部下に嫌味な伝言をしています。それに対して、沢崎も粋な回答を返しています。この辺りは、小説をお読みになってください。
ウーン、すごくかっちょっいいです。
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3.謎解きもしっかり
ハードボイルドだけでなく、事件の謎に対してもしっかりとした構成で描かれています。
沢崎が巻き込まれた狙撃事件の真相は全く意外なところにあります。そして、その真相は決して外には洩らせないものです。
これらの内容について、沢崎は淡々と動いてきれいに解決していきます。
全ての謎が明らかになった後、「将来もしものときに相談する相手としていいか?」と問われた沢崎が、ただ一言、「探偵としてなら」と言います。
渋くていいですねエ!旧シリーズも読んでみよう!
とても面白い小説です。是非、ご一読を。