北の大地で権限もなく捜査、主人公に対する試練が次々と!漂砂の塔 大沢在昌/著

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1.強い制約の中での殺人捜査

大沢在昌のハードボイルドです。今回は、活躍の舞台が北方領土という、普通考えつかない設定となっています。しかも、さらに強い制約を与えて、そこに、主人公が放り込まれます。

内容紹介を読めば、その設定がよくわかります。

2022年、雪と氷に閉ざされた北方領土の離島。日中露合弁のレアアース生産会社「オロテック」で働く日本人技術者が、死体となって発見された。凍てつく海岸に横たわる体。何者かに抉りとられていた両目。捜査権がなく、武器も持てない土地に送り込まれたのは、ロシア系クォーターで中国語とロシア語が堪能な警視庁の石上だった。元KGBの施設長、美貌の女医、国境警備隊の若き将校、ナイトクラブのボス…敵か、味方か?信じられるのは、いったい誰だ?日中露三ヵ国の思惑が交錯し、人間たちの欲望が渦を巻く!

主人公の石上は、上述の通り、ロシア系クォーター(祖母がサンクトペテルブルクの出身)で顔つきはロシア人、そして、中国語とロシア語が堪能であり、プロローグでは、潜入捜査官をやっています。

しかし、いろいろなしがらみから、その正体を、あろうことか警察の仲間からばらされてしまいます。

2.石上の苦悩

正体がばれたことで、急ぎ、警視庁に戻りますが、そこで待っていたのは、上記の殺人事件の捜査でした。

そして、正体がばれた先のボス(ロシア人)が、「裏切り者(スーカ)である石上を殺せ」と言いおいて高跳びしたという情報も入ってきました。

石上は、殺人捜査に関しては素人であるという設定もされていますが、上司の稲葉からは、身を隠すには丁度いいだろうということで、否応なく、現地へ追いやられる様が出てきます。

しかし、石上は行くのをためらいます!なぜなら、「一年の三分の二が雪と氷の世界の島に、警視庁警察官の身分なく三か月間おかれ、やったこともない殺人事件の捜査にひとりであたる」(27ページ)からです。

それでも、石上のスキルを考えると、その行先は、まさにうってつけといって良い場所です。何といっても、堪能な言語を駆使できる3国が入っている北の大地ですから。

また、警察官として断れる身分でもなく、石上は現地に行くことになります。

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3.現地の設定

石上の出張先は、歯舞群島の春勇留(はるゆり)島です。納沙布岬から東北東に40キロの海上です。ロシア名はオロボ島と呼ばれます。

現地までは、根室から、船で二時間、緊急の場合、ヘリを用いれば15分で到着できる設定になっています。

昔は、コンブ漁が盛んでしたが、4年前までは無人島ということでしたが、レアアースの漂砂鉱床が発見され、ロシア、中国、日本のオロテック関係者が暮らす島となっています。

比重の大きい鉱物が、潮や海流などで分離されて濃縮された漂砂鉱床が、この小説の表題に表れています。

登場人物も内容紹介に出ていますが、多少捕捉します。

  • 元KGBの施設長(エクスペールト):パキージン。スキンヘッドで軍人のように引き締まった体つきをしている
  • 美貌の女医:タチアナ・ブライノーヴァ。金髪をひっつめた、澄んだ水のように青い瞳を持つ目も覚めるような美人
  • 国境警備隊(ペーヴェー)の若き将校:グラチョフ少尉、年齢は30歳に届いていないと思われる
  • ナイトクラブのボス:ギルシュ。150cmに満たない、小さいが鋭い目をした男
  • 中国のプラント警備員:ヤン。しかし、只者ではない

石上は、殺人事件の捜査をやったことがないといっていましたが、かなり奮闘し、いろいろな謎を調べ上げ、解いていきます。そのせいか、何度か襲われて危ない目に遭遇します。

さらに、作者は、石上に対して、これでもかこれでもかと厳しい試練を与えます。石上がビビッて、逃げ去ろうとまでしますが、日本人としての矜持を胸に、小説は大団円に向かいます。

ある人物と協力し、さらに応援してくれる人間が現れ、最後は非常に気持ちのいい終わり方をします。

是非、ご一読を。

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