高齢化社会には重い現実がある!ロスト・ケア 葉真中顕/著

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1.概要

前回に引き続き、葉真中顕氏の作品です。

この小説は2013年に発行されていますが、小説を読んで、今更ながら、日本の介護は、非常に厳しい状況にあると思いました。

この小説の中でも語られていましたが、介護職は、重労働の割には給与が著しく悪く、やる気のあるものから辞めていってしまう過酷な労働だと思います。

そして、この介護職に関わっているのは、予備軍とも思われるような年齢の方が多いようにも感じます。そして、やる気だけでは食えなくなって、若い有望な人員がやむなく辞めていってしまうような状況です。

介護というと、若い方は皆、自分には関係ないことだと思うかもしれませんが、高齢化社会では、誰しも逃れられない問題なのではないでしょうか?

60爺も、介護が自分に降りかかってくるとは夢にも思いませんでした。父がアルツハイマーになり、小説の中にあるような事態も実際起きました。

内容紹介です。

社会の中でもがき苦しむ人々の絶望を抉り出す、魂を揺さぶるミステリー小説の傑作に、驚きと感嘆の声。人間の尊厳、真の善と悪を、今をいきるあなたに問う。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

2.内容少々

この小説に出てくる「彼」は、本人が、その過酷さ、やりきれなさを味わい、そこから、この国の介護の実情を知らせるため、ある決意をしたことが述べられています。

検事である大友は、人間の善性を信じており、犯罪者には「罪」の意識を持たせれば変わっていくと信じて疑わない堅物として語られています。

しかし、こんな彼にも、人間として扱われてうれしいという理由から刑務所を望む高齢者や、大きな敵であるはずの「彼」に対しては、自分の正義もままならないものであるという現実を見せつけられてしまいます。

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結局、人間は、自分が生まれ育った環境を大きく逸脱した人間の気持ちを理解することは出来ないのでしょう。どう声高に叫んでも、経験のないことを理解することは出来ないと思います。

人間が100人いれば、そこには、100の正義が存在する訳で、これが正義であるという唯一のものは存在しないのではないでしょうか?

大友の対極にいる佐久間も、大友の正義感を鼻持ちならない思いで見ており、自身の境遇の変わりようから、覚せい剤を使用し、犯罪に手を染め、最後はあっけなく逝ってしまいます。

この小説の中で「彼」が犯した罪(?「彼」は救いと言ってます)は、しかし、介護の過酷な現実にいる者にとっては、そのものずばりの意味であると思います。

検事は、遺族に犯人に対する恨み言を言わせたかったようですが、その意に反して、遺族の多くは「彼」に対して感謝していたのではないかと考えてしまいます。

是非、ご一読なさって考えてみてください。

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