虐げられた人間たちの心の叫び!童の神 今村翔吾/著

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1.概要

平安朝の頃の天朝に媚びない、諂(へつ)わない者達への物凄く酷い差別のありようを綴った物語です。現在の部落問題にも通ずるものがあると思います。

主人公は、大江山にいたと言われる酒呑童子他です。そして、敵役は、源頼光及びその四天王(渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武)になっています。

酒呑童子が、どうして、鬼と呼ばれる存在になったのか、何故、討伐されなければならなかったのか、そして、実際にはどのような人物だったのか、実際の討伐に至る過程はどうだったのか、鬼と忌み嫌われる人物がどんなふうに生きてきたのか 361ページの小説の中に、余すところなく描かれています。

どんな時代でも、搾取する側とされる側がおり、搾取される側は、いわれもなき罪を着せられ、歴史から消えてしまう、いや消されてしまうのですね。

よく、歴史は勝者が作るものとは言われますが、本小説を読んでいると、フィクションとはいえ、至極理解できます。

内容紹介です。

平安時代「童」と呼ばれる者たちがいた。彼らは鬼、土蜘蛛、滝夜叉、山姥……などの恐ろしげな名で呼ばれ、京人から蔑まれていた。一方、安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の最中に、越後で生まれた桜暁丸は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓っていた。
さまざまな出逢いを経て、桜暁丸は、童たちと共に朝廷軍に決死の戦いを挑むがーー。皆が手をたずさえて生きられる世を熱望し、散っていった者たちへの、祈りの詩(うた)。

2.詳細

内容紹介にある通り、平安時代「童」は人を蔑む言葉でした。鬼、土蜘蛛、滝夜叉、山姥と呼ばれた者達を物語の中心に置いています。

安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の日が、なぜ、そうしなければならなかったのかが物語のプロローグでわかります。その裏には、「童」達と朝廷の軋轢があり、敵役が卑怯な手を使って権力を手中に入れる過程が語られます。

物語は、越後に飛び、本当の主人公である桜暁丸が登場します。非常にまれな才覚を持った人間で、この桜暁丸が師匠となった蓮茂(れんも:プロローグにも登場する「童」側の軍師)に学び、めきめき成長する様が語られます。

しかし、越後に左遷されていた敵役源頼光及びその配下に騙され、素晴らしい父親は反逆者にされ、桜暁丸も没落してしまいます。

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零落して都に現れた桜暁丸は、結局、無頼の生活をしていくわけですが、そこから、師匠の蓮茂の関連から、「童」達とのつながりができ、自分らの処遇をどう上昇させていくかを考えるようになります。

時の朝廷には、藤原道長の隆盛期で、とても、「童」達と手を携える雰囲気はなく、一時的には和合の兆候が見えるものの結局、瓦解につながります。

朝廷軍の汚いやり方や、坂田金時(さかたのきんとき)のような「童」出身の四天王の苦悩や、同じく四天王の渡部綱(わたなべのつな)の和合しても良いと考える考え方などがつぶさに語られます。

最終的に歴史は変えられませんが、非常に面白く読ませていただきましたし、人間の素晴らしさや醜さも語られます。

是非、ご一読を。

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