鮮やかな謎解きの妙を堪能してください!がん消滅の罠 完全寛解の謎 岩木一麻/著

1.概要

第15回『このミステリーがすごい』大賞に選出された小説です。大賞受賞時の題名は「救済のネオプラズム」でした。

題名にある寛解とは聞きなれない言葉ですが、がんの症状が軽減した状態をいうそうです。完全寛解とは、がんが消失し、検査値も正常を示す状態のことです。

発刊された題名からわかるように、余命半年と宣言された患者のがんが、見事に消え去ってしまう例が立て続けに発生します。

しかも、患者は低所得者で保険の生前給付金を受け取ったとたんに、がんの消滅が起こります。

ここで、生命保険会社の職員や余命宣告をしたい者たちがその不可解さに挑戦していくものです。

なお、この小説は、第13回の一次通過作『完全寛解』を大幅に改稿した作品で、大賞選考者の茶木氏は「ここまで凄い改稿は、はじめて見た」と言っています。

さらに、「前回応募作でメインとなった謎解きのアイデアを前菜で惜しげもなく披露している」とも語っています。

内容紹介(ブックデータベース)を見てみましょう。

呼吸器内科の夏目医師は生命保険会社勤務の友人からある指摘を受ける。夏目が余命半年の宣告をした肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後も生存、病巣も消え去っているという。同様の保険金支払いが続けて起きており、今回で四例目。不審に感じた夏目は同僚の羽島と調査を始める。連続する奇妙ながん消失の謎。がん治療の世界で何が起こっているのだろうか―。

2.内容ちょっぴり

上述したように、冒頭で、生前給付金を受け取ったとたんに、がんの消滅が発生した事件の謎に、日本がんセンター呼吸器内科医院の夏目典明が挑戦します。

がんの状態は、手の施しようがない状態(ステージⅣa)で手術と放射線治療は選択できず、抗がん剤による治療を進めたものの患者は拒否し、怪しげな新興宗教の自然食品による療法に切り替えました。

すると、三ヶ月後、病巣がきれいさっぱり消えてしまうというものでした。

同僚の羽島悠太の「曖昧な助言」にいらつきながらも、羽島の指示した画像を眺めた夏目医師は、その謎に気づき吹き出してしまいます。

この第一の謎が、第13回『このミス』で披露されたものなのでしょう。これが、第一章の10ページほどで語られるのです。

がん消滅の罠 完全寛解の謎 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

新品価格
¥734から
(2020/4/9 10:58時点)

第一章の2で物語は10年前に飛び、夏目の恩師である西城医師の国立大学の退職の件、そして、旧題名であるネオプラズムについて語られます。

ネオプラズム(neoplasm)は、腫瘍のことを示す単語で、公衆衛生分野で、死因を分類する際に用いられるそうです。

さらに、西城医師が語った「医師でなければ・・・」という言葉が残ります。

第一章の3で、事件の舞台である湾岸医療センターの話に移り、理事長である先生と宇垣女医など、主要人物がそろいます。

この後、再び、夏目の診察した末期患者のがんが寛解する話が語られ、夏目医師が羽島医師や生保会社の森川達と、その謎を解いていく形で物語は進行します。

この謎解きは鮮やかで、「なるほど」と思わせてくれますが、それは皆さんが本書を読んで堪能してください。

是非、ご一読を。