それぞれの主人公の葛藤が見られます!信長嫌い 天野純希/著

1.概要

久々の天野純希著作の小説を読みました。前回は戦国末期の織田有楽斎の小説でしたが、本作は、織田信長の勃興時から没後まで、信長に人生を狂わされた(内容紹介より)七人の男を題材に取ったものです。

この方の感想文は今回で4冊目ですね。天を分かつ川(周瑜、決戦三国志!の2番目)、島津義弘伝(島津義弘)、有楽斎の戦(織田有楽斎)に続くものです。

織田信長は、歴史が好きなら誰もが知っている戦国時代の超巨星です。戦国時代後半に、尾張から彗星のように現れ、全国統一を目前にするも明智光秀の謀反により散った悲劇の武将ですね。

信長を主人公にした小説は、巷に多数あり、歴史小説の大家と呼ばれる人達がこぞって、各作家の信長像を記しています。

本作は、内容紹介にもある通り、信長と同時代に生き、信長によって自らの人生を変転させられた男たちを主人公にした短編集です。

桶狭間で首を取られた今川義元から、嫡孫ですが豊臣秀吉に主家を簒奪され、一大名で終わった織田信秀までがたどった人生を綴っています。

内容紹介です。

主役にはなれなかった敗者たちのドラマは、こんなにも、熱く、激しいものだった。信長によって人生を狂わされた七人の男。愛すべき負け犬たちの戦国列伝。

2.内容ちょっぴり

七つの短編から構成されています。

第一話 義元の呪縛

主人公は駿河国及び遠江国の守護大名・戦国大名である今川義元です。圧倒的な力を持ちながら、信長に首を取られてしまったことで知られています。

本作では、ある呪縛に駆られ自ら尾張遠征を実施しますが、桶狭間へ尾張勢が終結した謎について作者の新解釈がなされています。

第二話 直隆の武辺

主人公は戦国時代の武将で朝倉氏の家臣である真柄直隆です。

槍の名手として知られていますが、本作では主家に不満を持つ実績のない人物として描かれています。

第三話 承禎の妄執

主人公の六角承禎は戦国時代から安土桃山時代にかけての武将・守護大名です。

過去に京制圧の成功体験と名門意識を鼻にかけ、信長の上洛依頼を撥ねつけますが一蹴されてしまいます。

それでも長寿を保ち耄碌しますが、78歳まで生きた姿が描かれます。

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第四話 義継の矜持

主人公の三好義継は戦国時代の武将・大名。河内国の戦国大名です。

織田信長が足利義昭を擁立して上洛してくる際、信長の上洛に協力することで河内国を得ますが、義昭の追放の際、将軍暗殺の指示を蹴り、三好家最後の当主としての意地を見せます。

第五話 信栄の誤算

主人公の佐久間信栄は織田家筆頭家老佐久間信盛の長男です。

武辺者ではない信栄は茶の道に生きようとしますが、有名な佐久間信盛追放により、共に追放の憂き目を見ます。

しかし、本人は信長とかかわる必要がなくなりホッとしている姿を見せます。

第六話 丹波の悔恨

主人公は伊賀の上忍百地丹波です。

この話は面白かったです。丹波は高齢により、忍びの術も覚束ないものになってしまいます。しかし、妻のお梅は鍛錬によりしっかりした術を保ち、何度も丹波の命を救います。

ひょんなことから本能寺の変に遭遇し、驚くべきモノを手に入れるのです。

第七話 秀信の憧憬

主人公は信長の嫡孫織田信秀です。

秀吉に簒奪された天下を岐阜13万石足らずでは到底間に合わないものと考える秀信は、祖父の信長に憧れ大乱を期待し、関ケ原では西軍に属します。

しかし、現実は甘くなく、簡単に岐阜城を落とされ高野山で胸の病により病没します。

それぞれ主人公の悩みや意地など人間の葛藤を見ることができます。

是非、ご一読を。