それぞれゾッとさせられます!肖像彫刻家 篠田節子/著

1.概要

こちらも久々、1月に投稿した「きれいに映る鏡のその裏にあるものは!鏡の背面」以来の篠田節子の作品です。

主人公は高山正道、高山家の長男ですが姉に頭が上がらない人間です。第一話の冒頭では、高山家の墓の前に土下座されられ、今は亡き両親に謝罪をさせられます。

この主人公、美大卒業後、さる権威ある美術展に入選し、抽象彫刻が地元の役所前の橋に飾られたものの、収入はアルバイト程度で17年彼を支えてくれた妻に愛想をつかされてしまいます。

その後、知り合いの伝でローマに工房を持つ師匠の下へ、自分の才能を信じて大した考えもなく弟子入りします。

父の「物になるまで帰ってくるな!一切連絡もするな!」という言葉に送られイタリアへ渡ったものの、8年後わかったのは芸術に対する才能とセンスの差でした。

そして、日本に逃げ帰ってきたわけですが、そこで分かったのは父母の死でした。そして前述の墓の前での土下座に繋がります。

なんだかんだと言いながら、姉の口利きで八ヶ岳連峰を望む農村、山梨県南麓町に移り住みます。

そこで、イタリア帰りの技術で肖像彫刻像を拵えるわけですが、正道の製作する像には、とんでもないことに魂が宿ってしまうのです。

内容紹介です。

人が生きてきた時間を封じ込める―それが、肖像彫刻。芸術の道を諦め、八ヶ岳山麓で銅像職人として再出発した正道。しかし彼の作品には、文字通り魂が宿ってしまうのだった。亡き両親、高名な学者、最愛の恋人…周囲の思惑そっちのけで、銅像たちが語り始めたホンネとは。欲望に忠実な人々の姿になぜか勇気がわいてくる、人生100年時代の極上人生ドラマ!

2.内容ちょっぴり

この小説は、七つの短編による連作小説です。

第一話 レオニダスとニケ

上述した高山家の紹介と山梨県南麓町での正道の生活、思ったよりうまくいかない肖像家としての運営が描かれます。精魂込めて作ったレオニダスとニケがとんでもない用途で使われる落ちが笑えます。

第二話 雪姫座像

さっぱり顧客が付かない正道に初めての売上が成り立つお話です。しかし、裏には顧客の企みがあり、そういうことに疎い正道は絡めとられてしまいます。

そして、内容紹介にあった怪しい兆候が初めて見え隠れします。

第三話 高砂

姉から依頼があり父母の像を製作します。母の粘土原型を姉に見せるのですが、介護時代の過酷な状況を思い出し、姉の地獄のような体験を聞いた正道は狼狽します。

父母像が完成し姉に納めて2ヶ月後、姉夫婦の家でとんでもないことが起きるのです。しかし、姉の機転により解決します。

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第四話 雪姫立像

第二話での顧客は因業坊主なのですが、そこで納めた像が夜な夜な動き出すと言われて右往左往する正道です。

現代風にSNSによる拡散だとか、祟りをする呪いの像みたいなサイトも現れ、正道は製作者としてテレビ出演を依頼されるようなことも起こります。

すったもんだしますが、落ちは単純ですが、犯人に同情します。

第五話 最高峰

知の最高峰と呼ばれる肖像彫刻を制作した正道が、その肖像彫刻がつぶやくところを翻訳家と共に聞いてしまうお話です。

ここには、お金を払えばそれだけのお嬢様と、その対極にいる女性の対比が考えさせられます。

第六話 アスリート

若くして財を成した建築家が、過去に死別したアスリートの肖像彫刻を依頼してきます。片足立ちの裸体貯穀です。

ところが、製作の途中から怪しい事象があふれ出し、最終的には製作費はそのままでお引き取りをとの話となり、とんでもない実態が明らかになります。

第七話 寿老人

二つのお話が完結します。

自分の元妻からの話と、姉を通して依頼を受けた老人のお話です。

長寿の老人の寂しさと、死んでもなお夫を思う妻のお話ですが、どちらもちょっと怖いです。

いずれのお話も、ゾッとさせてくれます。

是非、ご一読を。