新撰組生き残りの三名が歴史の狭間で大暴れ!至誠の残滓 矢野隆/著

1.概要

本作は、明治の世に警官になった斎藤一と、動乱で亡くなったはずの山崎烝と原田左之助が再会し、歴史の狭間で大暴れする物語です。

さらには、長州の伊藤博文と山縣有朋とも絡んで、新撰組の三名が命懸けの働きをします。とても、読みやすくて面白い小説です。

ここでは、主人公の新撰組三名の略歴を述べておきます。

  • 斎藤一:新撰組三番隊組長を務め、明治の世まで生き残り、藤田五郎の名で警官となって西南戦争の際には抜刀隊に参画していたのは有名な話で、他の作家の作品も数多く出ています。また、若い方は、るろうに剣心でのニヒルな斎藤を記憶している方が多くいるのではないかと思います。
  • 原田左之助:新選組十番隊組長で、槍の名手として知られています。戊辰戦争における上野戦争の際に彰義隊に加わり、負傷し、その傷が元で死亡したとされています。るろうに剣心の左之助のモデルになっていますが、この小説の中でも豪放磊落な性格付けをされています。
  • 山崎烝は新選組で諸士調役兼監察(隊士の動向調査や情報探索)を務めていました。鳥羽・伏見の戦いの最中に重傷を負い、江戸へ撤退の際、富士山丸の船上で死去したことになっています。

内容紹介

明治の世に潜む新撰組の生き残り。原田左之助、斎藤一、山崎烝、政府の犬に成り下がるか、誠の志を貫くか。

2.内容ちょっぴり

新撰組生き残りの三名が絡むことによって事件が起きていく連作短編集です。七つの連作短編からなっています。

  • 至誠の残滓
  • 残党の変節
  • 闇夜の盛衰
  • 富者の懊悩
  • 愚民の自由
  • 淑女の本懐
  • 至誠の輪廻

この小説の表題となっている「至誠の残滓」で東京駒込蓬莱町に住む「詮偽堂」主人松山勝(原田左之助)の許に藤田五郎(斎藤一)が訪問するところから始まります。そして、高波梓と名乗っている山崎烝のことも知っていると匂わせ協力を要請します。

この話の最後に、新撰組副長土方歳三の愛刀である和泉守兼定を斎藤が手にします。合わせて、政府の大物である山県狂介の話が出てきます。

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「残党の変節」では、窃盗団にとらわれた山崎烝を助け出す原田左之助と斎藤一の姿が描かれます。

三話以降で、斎藤一、山崎烝は守るべき者たちのためには政府の犬のような行動をせざるを得ない状況に巻き込まれていきます。明治まで生き延びた男たちの葛藤にページを読む手が止められません。

そして、最終話での闘い、まさかこんな闘いになるとは予想もしませんでした。「狂介」の名に恥じぬ山県の決着の付け方がかっこうよかったですね。

また、元新撰組の三名、原田左之助の一本気な気性、山崎烝の優しさ、斎藤一の素直でない心持、三人の性格の違いで反発し合い、最終的にお互いを認め合っているような会話が読んでいて心地よかったです。

是非、ご一読を。