歴史の英雄が全てを望んだわけではない!もののふの国 天野純希

1.概要

天野純希による武士による対立の歴史の物語です。そして、その対立の軸には、海族と山族が存在していたことを読み解いています。海族と山族は決して和することなく、相対した時点で互いに嫌悪を感じる設定です。

物語の始まりは平将門からです。この源平の時代から始まって、明治維新の土方歳三に至るまでの闘いに焦点を当て、これらに海族と山族の争いが隠されていたことを、うまく融合させています。

そして、それぞれの物語の中で主人公となる人物には、長老と呼ばれる存在が接触してきて、逃げたくても逃がしませんし、退場の場合は有無を言わせず、その人物に引導を渡していきます。

この長老と呼ばれる存在は、歴史の中の登場人物に姿を変えて現れてきます。そして、この存在は誠に自分勝手で、その理不尽さは、自分の言うことを聞かないものは焼き尽くし破滅をさせる聖書の中の神のようです。

これらの設定は、この小説を含め、螺旋プロジェクトと言う文芸競作企画の一部です。

螺旋プロジェクトとは、「小説BOC」1~10号に渡って連載された、8作家による壮大な文芸競作企画。3つのルールに従って、古代から未来までの日本で起こる「海族」と「山族」の闘いを描く。

ルール等詳細は、こちらをご覧ください。

内容紹介です。

源頼朝、足利尊氏、明智光秀、大塩平八郎、土方歳三…命を懸けた果てなき争いの先に待ち受けていた光景とは?

2.内容ちょっぴり

この小説は、大きな四つの巻に分かれています。

  • 源平の巻
  • 南北朝の巻
  • 戦国の巻
  • 幕末維新の巻

そして、これらの巻に2~3の章に分かれています。

源平の巻は、「黎明の大地」、「担いし者」、「相克の水面」の章で構成されています。それぞれの主人公は、平将門、源頼朝、平教経です。

平将門が先鞭をつけた武士の世が、頼朝によって花開くわけですが、それぞれの主人公たちは、その役割を望んでいた訳ではない解釈がなされています。

南北朝の巻は、「中興の秋」、「擾乱に舞う」、「浄土に咲く花」の章で構成されています。最初の二章の主人公は、最初の二編は、楠木正成・足利尊氏のダブル主人公です。

建武の中興を軸に、公家の勝手により帝直轄の政を夢見た楠木正成の落胆と足利尊氏の不死鳥のような人生を描いています。

「浄土に咲く花」は、足利三代将軍である義満が主人公です。武家として最高の位にのぼり、天皇をして成り替わろうとしますが、あと一歩のところで長老に役割を終えたと告げられ、無念のまま世を去っていくまでが描かれます。

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戦国の巻は、「天の渦、地の光」、「最後の勝利者」の二編の章で構成されています。初めの章の主人公は明智光秀です。

徳川家康が安土城を訪れた際の接待役を命ぜられる場面から、織田信長から恐るべき計画を聞き、諌止し、本能寺の変に至るまでの流れを描いています。最後に南光坊天海に繋がっていきます。

「最後の勝利者」は、乱世を終息させた徳川家康が主人公です。家康が、豊臣秀吉の招きに渋々応じて上洛したところから始まり、豊臣を滅ぼした後に死ぬる場面までが、海族、山族の相克を絡めて描かれます。

最後の幕末維新の巻は、「蒼き瞳の亡者」、「回天は遠く」、「渦は途切れず」の章で構成されています。

「蒼き瞳の亡者」は、大塩平八郎の息子が、江戸時代の天保8年(1837年)に、大坂で大坂町奉行所の元与力大塩平八郎とその門人らが起こした江戸幕府に対する反乱を語っています。

平八郎は、見えない存在にそそのかされ、無謀な計画を実行させられた形で哀れですが、作者も結末で救いを与えます。

「回天は遠く」、「渦は途切れず」の主人公は、西郷隆盛とひじかたのダブル主人公です。西郷隆盛が血を流した革命を志向し、無血革命を目指した坂本龍馬暗殺の首魁となり、それに抗うひじかたとの長い闘いが物語られています。

いずれも面白い物語です。

是非、ご一読を。