ちょっぴり悲しく爽快な物語!鬼神 矢野隆/著

1.概要

この方の作品を読むのは初めてです。

矢野隆は、1976年福岡県生まれ。2008年『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞。その後、『無頼(ぶら)無頼(ぶら)ッ!』『兇』『勝負(ガチ)!』など、ニューウェーブ時代小説と呼ばれる作品を手がける。

本作品は、金太郎で有名な坂田金時を主人公に据え、源頼光と他の四天王(渡辺綱、卜部季武、碓井貞光)と共に、大江山鬼退治を題材に取った物語です。

お話は、足柄山に住む坂田金時の許に、金時の父である坂田蔵人が源頼光の許で働いていた縁で、頼光が自分の部下として働いてくれるよう来訪することから始まります。

金時は、年老いた母を一人にできないと思っていたのですが、頼光が伴ってきた渡辺綱(本作品では女性です)と闘い、に華麗に敗れた息子を見た母は、息子が頼光の下で立派な武士になるよう決断し、「もう家に入れない!」と言い覚悟を示します。

こうして、坂田金時は源頼光と渡辺綱に従い、都に出て頼光の屋敷に住まうことになります。

そこには、後年、四天王と呼ばれる卜部季武、碓井貞光が既におり、金時にとってはあまり面白くない都での暮らしが始まります。

内容紹介です。

山で生まれ育った坂田公時は、武門の頭領・源頼光に従い都へ上る。初めて知る「身分の境」に戸惑う彼は、ある日、鬼の噂を耳にする。一方、神の棲まう山・大江山では、民の糧である獣たちが姿を消した。頭目の朱天は仲間たちのため、盗みを働く決断を下す。都と山。人と鬼。陰謀と希望―。交わるはずのない思いが交錯するとき、歴史を揺るがす戦が巻き起こる!

2.内容ちょっぴり

源頼光が仕えているのは、平安時代位人臣を極めた藤原道長です。そして、道長には、陰陽師として高名な安倍晴明が仕えています。

本作品に当方する安倍晴明は極めて高齢となり、陰陽頭として陰陽寮の頂点にいます。夢枕獏の描く安倍晴明ではなく、権力者に取り入った醜悪な老人と化しています。

物語は、大江山に移り、この山に住まう山の民のエピソードが出てきます。この山に住む朱天は狩りを主体に暮らす山の民で、その里を纏めています。

この山里に住む男たちは、皆、狩人で、一日猟を行い、獲物を持ち寄り、大物が取れた場合は、宴をして暮らしています。

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この山に道長と晴明が目を付けるのです。大江山には、「川が朱く染まる」即ち、銀や銅が産出するのです。そのため、晴明は式神を使って山から鳥獣たちを払い、山の民の食い物を減らしています。

このやり方が功を奏し、大江山の民たちは飢え始めます。相手が式神ですので、朱天たちは何故獲物が減ったのかわかりません。ここに至り、山の民は都に押し入り食料を強奪し始めます。

これを受けて、都では天皇からの勅命で大江山の鬼を討伐することになるのです。そして、その命が源頼光に下ります。

大江山に行き、朱天と共に暮らすことで、山の民は鬼ではなく、自分と同じ人間であることを理解し、何故討伐しなければならないのか坂田金時は非常に悩むことになるのです。

それは、源頼光も同様でした。道長、晴明の汚いやり方に武人の魂が震えるのです。しかし、主人の命は絶対!源頼光は、からのやり方で事を収めます。

ちょっぴり悲しい結末ですが、爽快な物語です。

是非、ご一読ください。