どのお話も面白い!合理的にあり得ない 上水流涼子の解明/柚月裕子

1.概要

この作者の作品ですので面白いだろうと当たりを付けましたが大正解でした。

軽く読めますが非常に楽しめる小説だと思います。元弁護士が依頼を受け、助手と一緒に事件をバッタバッタと解決していくお話です。

主人公は上水流涼子です。苗字は「かみづる」と読みます。美貌の元弁護士です。彼女の姿を小説の中では、こう言っています。

長いまつ毛が切れ長の目に影を落とし、形のいい唇は微かに笑みを湛えて居る。日本人形のように整った顔立ち・・

また、彼女の助手として、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を見せる貴山も主人公と言っていいでしょう。こちらの容姿は、「いかにも女にモテそうな端正すぎる顔立ち」といっています。

いわば、美男美女のチームですね。しかし、こんなだと目立ちすぎちゃって、どうなんだろうって気がしますがね。

さらに登場人物として、新宿署刑事である丹波勝利です。彼は、上水流に対して、「なんだ、行き遅れ・・」などと言う襟がよれたワイシャツに、折り目がすっかり取れたズボンをはいた際得ない中年男です。現在は、涼子と持ちつ持たれつの関係になっています。

彼らが、直面する問題を、鮮やかなやり方で解決していく様は読んでいてスカッとします。

内容紹介です(「BOOK」データベースより)。

「殺し」と「傷害」以外、引き受けます。美貌の元弁護士が、あり得ない依頼に知略をめぐらす鮮烈ミステリー!

2.内容ちょっぴり

この小説は五つの短編で構成されています。

  • 確率的にあり得ない
  • 合理的にあり得ない
  • 戦術的にあり得ない
  • 心情的にあり得ない
  • 心理的にあり得ない

「確率的にあり得ない」は、上水流涼子、貴山がさっそうと登場する物語です。覚悟のないボンボン社長が詐欺師の餌食になる所をあるトリックを使い見事に阻止します。

「合理的にあり得ない」は、億万長者で金さえあれば何でもできると考えている「人の気持ちを解する頭がない」男に鉄槌を下す物語です。涼子と貴山が駆使するからくりが面白いと思います。

「戦術的にあり得ない」は、涼子と貴山に暴力団の総長から賭け将棋に勝利させるよう依頼が舞い込みます。現在のプロを上回る将棋ソフトを素材に、相手が使っているいかさまの解明と相手のそれを上回る方法を考え出す貴山の頭脳が見事です。盤上の向日葵を思い出しました。

「心情的にあり得ない」は、涼子が弁護士資格を失った事件の詳細と、貴山が涼子の助手となったいきさつが解明されるものです。ずうずうしくも、涼子を嵌めた諫間(げんま)の依頼をうまく処理して倍返しする涼子と貴山の活躍をかみしめましょう。

「心理的にあり得ない」は、野球賭博を題材にしています。こちらをしゃぶり尽くそうとする相手を、うまく誘導して、逆転させる発想が見事でした。

いずれも面白い物語ばかりです。

是非、ご一読を。