数々の謎が明らかになるノンストップ刑事物語。冬の狩人 大澤在昌/著

1.概要

大澤在昌の狩人シリーズの最新刊です。見かけは単なる小太りの中年のおっさんである一匹狼の佐江刑事が主人公となります。

今回の事件の発端は、3年前にH県で発生した「冬湖楼事件」です。未だに解決できていませんでしたが、この事件で行方不明だった重要参考人である阿部佳奈からH県警にメールが届くところから物語は始まります。

この重要参考人から、出頭する条件として、何故か、警視庁新宿警察署の刑事である佐江に同行してもらうことが述べられます。

H県警が調べると、前巻で暴力団員との撃ち合いで重傷を負った佐江は、情熱を失ったのか警察に辞表を出しています。しかし、まだ、受理されずにいる宙ぶらりんな状況で休職中なのでした。

H県警は、捜査一課の新米刑事・川村に、佐江の行動確認を指示します。そこで、佐江との接触があります。佐江は、拙い尾行をする川村を簡単に見破って詰問するのですが、このシーンには笑わされました。

先程、佐江刑事が主人公と言いましたが、H県警の川村と重要参考人である阿部佳奈が準主人公として活躍します。

内容紹介「BOOK」データベースより)です。

3年前にH県で発生した未解決殺人事件、「冬湖楼事件」。行方不明だった重要参考人・阿部佳奈からH県警にメールが届く。警視庁新宿警察署の刑事・佐江が護衛してくれるなら出頭するというのだ。だがH県警の調べでは、佐江は新宿の極道にとことん嫌われ、暴力団員との撃ち合いが原因で休職中。そんな所轄違いで無頼の中年刑事を、若い女性であるはずの“重参”がなぜ指名したのか?H県警捜査一課の新米刑事・川村に、佐江の行動確認が命じられる―。筋金入りのマル暴・佐江×愚直な新米デカ・川村。シリーズ屈指の異色タッグが炙りだす巨大地方企業の底知れぬ闇。

2.内容ちょっぴり

この小説の中で、佐江が何度も「警察はメンツで動いている」と言っています。優先順位で見ると、重要参考人の安全よりも、メンツが上にくるそうです。おっかないですね。

そして、縄張り意識です。自分の所轄内の事件は、他の所轄には触らせない体質があるようです。現在の警察もそうなのかなあと思ってしまいます。

H県警の新米刑事・川村は、佐江と同行しているうちに佐江の考えに感化されていきますが、それは、H県警の中で孤立していくということでした。

佐江は、川村の心理応対を的確に把握しており、川村がH県警にいられなくなってしまう危惧を感じ、気を使って、川村の立場を守るような動きもします。

また、この小説の中では、数々の修羅場をくぐった佐江ならではのパフォーマンスを見ることが出来ます。特に、新宿区内のやくざのあしらい方や、地方のやくざを手玉に取るところなど、読んでいて痛快です。

佐江の持っている情報屋も優れもので、闇の中の動きを的確に把握しているようです。

重要参考人が何故佐江を指名したのか、また、「冬湖楼事件」の真犯人は誰なのか、県警の中にスパイがいるのか複数の謎が明らかになる後半まで、566ページの大長編ですが、飽きることなくスラスラと読み進められるでしょう。

是非、ご一読を。