新しい解釈がいくつか出てきます。信長 天を堕とす 木下昌輝/著

1.概要

2012年「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞した著者による織田信長モノです。

ここでの信長は、桶狭間の戦いで今川義元の首を上げるのは既成事実とばかりに策略を練り上げて戦いに臨みます。そのため、敵地である遠江の井伊谷まで乗り込むような身の軽さです。

また、熱田神宮で気勢を上げるつもりが、わが手で育てた千余騎の馬廻り衆が集まらず愕然とするものの、「永楽通宝」を使って3度表が出るか神意を問い、見事に群集を自分の味方に付け桶狭間へと進発するのです。

そして、桶狭間においても突然の突風を味方につけ、敵の総大将今川義元を討つことになります。しかし、信長は熱田神宮で集合しなかった部下たちに比べ、果敢に戦って散った今川義元の部下を思い、複雑な心境に陥ります。

この小説の中での信長は、恐怖を知らない男として語られ、恐怖の正体を自ら得ようとして戦い続けます。

内容紹介(「BOOK」データベースより)です。

強さとは何か。己は強いのか。織田信長は、桶狭間で今川義元の首を取り、姉川で浅井・朝倉両軍を打ち破って着々と領土を拡げても、問い続けていた。長島一向一揆で二万を超える大坂本願寺の宗徒を焼き殺し、「神になる」と宣言。長篠で武田勝頼に圧勝して強大な権勢を手にしたが、それでも自分を信じることができない。敵将への妬みも消えず、麾下の兵を真に信頼することもなかった―。天下布武目前、重臣の謀反によって没した傑出の猛将、信長とは何者だったのか?

2.内容ちょっぴり

目次です。五章に分かれています。

  • 第一章 下天の野望
  • 第二章 血と呪い
  • 第三章 神と人
  • 第四章 天の理、人の理
  • 第五章 滅びの旗

それぞれの章の闘いは次のようです。

この小説では、美濃獲り及び上洛戦には触れていません。小牧山に移る場面が少々ありますが、その後、朝倉領への進行になり、浅井の裏切りから姉川への戦いに移ります。

この中で、第一章から今まで知らなかった家臣が出ているのに気づくでしょう。岩室長門です。調べてみると、岩室重休といい、早い時期から織田信長に仕えていたようで、永禄2年(1559年)には赤母衣衆に抜擢されています。

また、太田牛一が記した信長公記において、重休のことを「隠れなき才人であり、その死を信長も大いに惜しんだ」と記述しています。

そして、朝倉領進行時の浅井の裏切りに、妹の市が大きな役割を果たしていたとの設定で、これらは、過去に読んだ信長モノにはなかった解釈ですね。

信長は、知らないことは徹底して調べ上げ、自らその本質(たとえば地球が丸いことなど)を見抜く稀有な才能を持っていたことが語られます。

最後に、海外に渡って外国を征服するようなことも書かれていますが、賢い信長のことですから、そんな無謀なことは考えなかったのではないかとの違和感を持ちました。

是非、ご一読を。